2002-05-20(月) 23:45(UTC +0900) p Tweet
NHKは相変わらず良い番組をやってますね。お題は「変革の世紀」。今回見たのは、米国での象徴的な事例を元に、「巨大組織としてのその組織形態は今後どのようにあるべきか」を問い直すというもの。とても魅力的です。ということで下記に具体例を。
米国陸軍。
典型的な上意下達による指揮・命令体系ですが、ココでの改革は『権限の委譲』と『徹底的な情報共有』です。「組織vs組織」で戦っていた大戦時代は個々の兵員の練度や扱える兵装など、なるほど上意下達式での体系が有効であったのでしょうが、現在ではもはや状況が異なっております。
すなわち、敵は「ゲリラ」であり「民兵」であり、つまりは「独自の判断で行動している小集団の集合体」であるわけです。こんなん相手に戦うのに、いちいち本国の総司令部なんぞにお伺いをたてててやっていける訳ありません。それでも物量的・性能的に圧倒している間は何とかなりましょうが、今後は武器等の流出がより一層進んで、彼我の差はドンドン縮まっていく訳です。事態は深刻となります。
ついで、兵員の練度ですが、先の報復テロの前後に実行された特殊部隊による侵攻を見ても分かりますが、局地戦に投入されるような連中の練度は非常に優れている訳です。コレはしょっちゅう実戦をやらかしている米軍ですから、前線に投入される兵員の練度はその底辺の広さからも相応のレベルを期待出来ます。
最後に兵装。先に「彼我の差は縮まっていく」と示しましたが、米軍では高性能化・強力化・電子化・軽量化を進めて順次その兵装を刷新している訳で、なんとかその差を保とう・広げようと躍起です。特に、電子化とそれに伴う高性能化・軽量化はなかなか流出しづらい「技術」ですから、コレは相応の優位点となります。
まとめると、
- 『敵』という存在の変容により、作戦行動における判断はより迅速にならねばならず、ソレこそ分単位・秒単位を求められる
- 歩兵であっても従来にない強力で高性能な兵装を携行出来る
- 強力な兵装を独自に運用して、現場の判断で戦術的な行動をとれるだけの兵員は揃っており、それに対応出来るだけの練度も期待出来る
と云う状況です。
ならば、「これからは軍全体を一個の『個体』として扱うことなく、個々が自立的に考え、判断し、行動する、『群体』として運用しましょう」と云う考えが出てくるのは、むしろ当然の事な訳です。
では、テレパスならざる人類の寄せ集めたる軍隊が『群体』として有機的・効率的に活動するにはどうすればいいか? コレは理想的な『群体』であるところの蟻や蜂などの社会的昆虫を規範と出来ます。つまり、一貫した共通意識と、実際の活動に必要な情報の徹底した共有です。
もっとも、軍隊などの場合は更にもう一つ、中央集権で一つところに集約されていた権限を大幅に現場に委譲する必要がありますが、先の仮定が有能な現場指揮担当を前提としているので、ココでは割愛。
共通意識、コレは簡単。軍隊なんて結局昆虫と同じで、その意識なんて生存本能の発露の象徴でしかありません。生存競争だろうが国家間戦争だろうが、根っこは一緒。曰く、「勝利」の一言。
問題は必要な情報をどのようにして共有するのか、ということになりますが、ここら辺は米国の得意な情報通信技術でどうとでもなります。コレまでは軍の司令部が一括して握っていた戦術的情報を、最終的には一兵卒までが常時閲覧出来ればそれで良いと云うことです。自分の隊は地形的に何処に位置しているのか、友軍は何処に陣取っているのか、敵勢力は何処に陣取っているのか、各々の進軍方向はどうなっているのか。それらの情報を各員が携行している機器で常時確認可能とし、離れたところの友軍とも同一の戦況図を見ながら通信して適宜協調行動を企画可能とする。(暗号化とクラッキング対策、それとコストの面を無視すれば、この程度の装備は現在の日本でもごく普通に一般的な製品で構成可能です)
で、これらのことを実際に配備しようとしている勢力が米国陸軍内に既に存在しているそうで。
さて、元々は軍隊の運用手段として開発された上意下達のピラミッド型組織ですが、コレを大成させ現在のほとんどの企業組織で採用されるまでに高めたのは、自動車の大量生産を実現し大成功を納めた「Ford Motor Company」です。で、そのFordですら組織改革を実行しているようで。
Ford Motor
やっていることは軍の場合と似ようなもので。
勝負の相手であるところの市場は、大量の画一製品で満足していた(巨大な軍組織)時代から、個々の個性に合わせてオーダーする少量多品種製品を求める(ゲリラ的小規模組織)時代に。
要員であるところの従業員は、大量生産のための生きた加工・組立機械(ただの軍隊)から、顧客のオーダーを最前線で感じ取り必要なモノを適宜用立てていく専属の製品企画担当(優れた『個』の集合である『群体』)へ。
こちらで印象的であったのは、いわゆる『中間管理職』の有り様が一気に変革されていくということです。
Fordの副社長だかが「これからは部下に上司からの連絡事項を伝える必要は一切ありません」的なことを明言していたのが本当に凄いな、と。
販売の現場であるディーラーや製造の現場である工場作業員、納入部品製造の現場であるサプライヤーの発言力が強化され、コレまで「上位」であった管理者や幹部はそれら「現場をサポート」する役に徹しなさい、と。
ソレを明示するために、三角形によって示されるピラミッド型組織図をひっくり返して、逆三角形で逆ピラミッドを示し、コレまでは底辺であった辺を最上部に持ってきて、更にその上位に顧客(お客さま)を置く。正に古くからある商人の鉄則であるところの「お客さまは神様です」状態。
この組織変革を持って、より高みを目指すために邁進すると、ピラミッド型組織を生み出したあの巨大組織ですら決断したってコトです。
これらをふまえて、研究期間などが二十一世紀型の新しい組織形態としてあげているのが「web型組織」でした。
個々の一人一人が組織上の一モジュールとして存在し、各々の業務に従って必要に応じて適宜チームを組み、問題解決にともないチームは分解、また別の問題に取り組むために別のチームが自然に発生する。もちろんチームを掛け持とうが後から参加しようが途中で抜けようが、ソレが必要であればなんの制約もナシ。必要とあればどのような意見も誰からでも発言でき、実績やキャリアの差に依らず良い意見はドンドン採用されていく。組織内での評価は「役職」や「賃金」だけではなく、「仲間からの尊敬」や「チームとしての結果とその結果への関わり方」こそ優先される。
具体例として挙がってたのは「指揮者のいない管弦楽団」と「(なんとかいう)製紙関係の研究機関」(名前失念)でした。
いずれの場合も、肝は「情報の共有」ということですね。
翻って、今現在自分の属する企業の在り方… もー、真っ暗で…
組織変革を実行するために努力するべきか、とっとと見限って他の職を当たるべきか…
なんかやたら長くなったので今日はここらで終い。
ちなみに、今日のネタにしたのは深夜にやってた再放送を見てのこと。民放はコレをやってくんねーから辛い…
今日のイラつき
NHKよ、頼むからwebサイトをホームページとか言わんでくれ… (正しい言葉はあるんだから、ソッチを使おうよ)
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